「高校生」にはならなかった長男

2019-05-11 に別ブログに書いた文章です

5年前の事ですが。

闇もいつかは明けるという事で、書いてみました。

私も息子も鬱状態だった時代の事です。

ガシャーン!と、何かを投げつける音に

しゃがみ込み、ガタガタと震えている私にむかって、

「そんなに俺を見てんのが嫌なら、どこにでも行けばいいだろう!」

長男はそう怒鳴りながら、手元にあったリモコンを

床に叩きつけた。

その音に、更に動悸と震えと涙が止まらなくなる。

恐る恐る見れば、長男の目も、泣きそうだった。

中2から不登校になった。

3年に進級して少しすると「高校に行きたい」「寮のある学校に入りたい」と言ってきた。

2年生の授業がまるごと抜けてる状態では、

普通の塾ではついて行けない。まして、学校にも戻れそうにない。

1年間、経済的な面は目をつぶり家庭教師を頼む事にし、浮き沈みはあったが頑張っていた。

中学校の学級担任の先生との相性も良かった。

思春期鬱の状態を理解してくれて、多方面にわたり母子共に、色々とアドバイスもしてくれた。

いよいよ受験間際に迫ってきてからは、出席日数の足りなさを副申書を作成してまで、

後押ししてくれ、無事に公立高校の前期入試に合格した。

入学準備、入寮準備を全て整え、2日後に入学式という段階になって、

「やっぱ、無理かも…」

目が、「あの頃」の目に戻っている。

メンタルが乱高下する時の、落ちきった時の目

落ち着いて話せるようにと、様子を見る。

入学式当日の朝。

三男の中学校入学式も日が被った為、そちらは祖母に頼み、長男の背中を押す事に集中した。

入寮するための生活用品一式と、学校の準備物を車に積み込み、

「無理…」を繰り返す長男に、とにかく行くだけでも、と、

スエットにジャンパーをかぶせて車に促す。

ダラダラとでも、乗り込んだから…ひょっとしたら、何とかなるかもしれない。

そんな期待をほんの少しだけ感じながら、なるべく冷静な口調で、

「入学式、遅れますって電話しておくよ」と言っておく。もちろん、返答は無い。

「あの頃の目」をして、うつむいてシートに座る姿。

支援センターや思春期外来、フリースクール等、対応策や居場所を探して、

もがいていた頃に何度も見た姿を思い出した。

受付は終わっていたが、近くに居た先生に事情を説明すると、数名の先生が車まで来てくれた

「せっかく来たんだから、降りて顔見せてくれ」

「一緒に校内を歩いてみるか」

「少し話しがしたい」

そんな風に言われ、仕方なく車から降りる。

一斉に取り囲まれるようなカタチで、正論を説かれた時に、

私の中で「終わった…」と感じた。

長男が1番嫌う、上からの押し付けがましい言葉。

みるみるうちに、長男の顔色が変わり呼吸は乱れ、

過呼吸の発作を起こし、地面に倒れ込んだ。

場所を変えて、休ませてもらったが、その間も説得に必死な先生。

「息子さんに校内を案内してきますので」そう言って外へ出て行った。

しばらくして、「一人で帰る」と携帯電話にメッセージが来た。

え?どういう事?先生と一緒でしょ?

敷地は、どこまでが校内なのか分からないくらいの広さ。

車では来たことの有る町だが、息子に土地勘は無いはず。国道に出れば一本道だが…。

はぐれた先生はもちろん、他の先生も探し回って、

何とか敷地のはずれで見つけて連れ戻してくれた。

「この状況では難しいので、一旦家に連れて帰ります」

当たり前だよな、と思いながらそう伝えた。

それでも先生方は「待ってます」と言ってくれた。

朝と同じ状態。だけど、私も息子も、どこかサッパリとしていた。

「社会人に、なるわ」「うん、良いんじゃない」

そんな会話をしながら、帰ってきた。

そのまますぐに、順調に社会人になれたわけではなく。

冒頭のやり取りは、学校をやめて『無所属』の時の事。

学生でも、社会人でもなく、居場所の定まらない自分自身。

同級生からは、「自由で良いよな」と言われるも、

「自由なんかじゃない。好きにしていいよ、って言われても、どっちに向かったら良いのかも分からないのに」と本人は苦悩していた。

苛立ちをぶつけてきたのは、あれが最後だったと思う。

半年間、動き出せなかった長男が、秋になって原付免許を取得。

自分好みの古いタイプのバイクを手に入れてから、世界が大きく変わっていった。

バイクに乗ってる中学時代の同級生と交流が復活し、

その繋がりから、バイトを決め、社会に入っていく事が出来た。

思春期外来の検査で『同年代より言語能力が高い』

故に、同級生より大人との会話のやり取りの方が、満足度が高いのかもと言われたのが納得できた。

(同級生との付き合いも楽しいのは見てて分かるけど。)

一度も制服に袖を通すこと無く

一度も「○○高生です」と言う事はなかったけど。

先日無事に20歳になりました。

社会人として、しっかりやってます。

【2022・12月現在。しっかり正規会社員で仕事続けてます】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA